2016年8月26日金曜日

「ノーマライゼーションは障がいのあるなしに関わらず人を幸せにする」 「UDトーク」青木秀仁さんのお話


その名は「UDトーク」

会話をリアルタイムに文字化する

 ずいぶん前の話である。小金井市の障害福祉全般の課題を議論する「地域自立支援協議会」の今年度初めての会議が5月17日に開催された。今年は委員が交代し、協議会の運営支援委託事業者も新たな事業者に交代した。この事業者の提案により、今年度から聴覚障がいの委員さんとのコミュニケーション補助のため会話を文字に変換するアプリケーションソフト「UDトーク」を導入した。
 会議では、各委員の手元に置かれたタブレット端末(IPAD)に接続されたマイクへの発言が前面のスクリーンに文字化して投影され、聴覚障がいの委員さんはスクリーンを見て会話内容を理解する。ただし聴覚障害の委員さんの発言は手話なので、これは手話通訳者が音訳する必要があるのだが、手話通訳者の発言もUDトーク経由でスクリーンに文字化されるため、発言内容の確認ができるわけだ。しかも文字化された発言はすべて記録されるため議事録として活用できるのだという。
 小金井市の障がい福祉について議論する地域自立支援協議会でこのような新しいツールが使われているのを目の当たりにしてうれしくなり、会議のアシスタントとして参加していた開発者のシャムロックレコード株式会社 代表取締役の青木秀仁さんと名刺交換させていただき、先日やっとお話を伺うことができた。

きっかけは中途失聴者との出会い

 青木さんはもともとプログラマーとして音声認識を専門とする会社で働いていた経験があり、ある中途失聴者との出会いがこのアプリ開発の動機になったのだそうだ。青木さんによれば聴覚障がい者のうち、手話を理解できるのは全体のわずか15%なのだという。似たような話は視覚障がいの方に聞いたことがあったが、これは驚きである。
 青木さんが大切にしているのは個人ユース。そのために音声認識技術を青木さんなりにコーディネートして個人に使いやすくしたもので、音声認識エンジンをライセンス使用している。あくまでも個人対個人の使用を基本に考えた聴覚障がい者と私たちの壁を取り払うツールだ。
 アプリをインストールしたスマートフォンに声を吹き込めばすべての発言が文字に変換されるため、例えば、それが会議ならば議事録作成の手間が大幅に削減できるメリットもあり、様々な場面での可能性の大きさを感じるアプリだ。しかも個人が使う分には基本的に無料でダウンロード可能(機能拡張は有料)なところが素晴らしい。
 このアプリは聴覚障がい者に対して、話して伝える側のツールなので、聴覚障がい者からのコミュニケーションは、手話か筆談が必要になる。ただしこのアプリはタッチスクリーンへの手書き入力もできるので、タブレットやスマートフォンでの筆談は可能である。 


認識した音声の翻訳メニュー
マイクへ入れた音声はこのように文字化される

すべての人を幸せにするノーマライゼーション

 導入事例を紹介した記事を見せていただいたが、私立高校でUDトークを導入した聴覚障がい当事者の生徒がいるクラスは、言葉を伝える側の教員が、アプリが認識しやすいようにはっきりとわかりやすく授業を行った結果、そのクラスの学力が伸びたのだという。アプリが認識しやすいということは、他の生徒にとっても理解しやすいわけだ。こうした例とは別に、黒板の文字を認識することが苦手なタイプの学習障がいの子どもたちなどに対する可能性も大きいと思う。また日本語以外に英語、中国語、韓国語、ドイツ語、フランス語、スペイン語、タイ語、ロシア語など22の国と地域語への翻訳が可能。さらに文字化したものはログ(記録)としてメール送信も可能(!!)本当に凄いアプリである。こうした導入事例を参考に、我が小金井市でも窓口への導入を検討してもいいのではないだろうか。 青木さんにとってのノーマライゼーションとは、「障がいのあるなしに関わらず全ての人を幸せにするもの」で、こうした様々な取り組みや考えは学校に限らず今後の社会全体に必要な理念としてあてはめることができるはず、という強い思いが感じられた。
この写真は「はい、チーズ!」とアイフォンに音声認識させてシャッターを切ったもの。向かって左が青木さん。このアプリ「声シャッター」の開発も青木さん。鈴木の右はUDトークの開発に興味を持ち一緒に同行したY氏



 

 
 
  

2016年8月25日木曜日

行ってきました「夏休み木工チャレンジ」

 宮地楽器ホールのマルチパーパススペースで開催されている「夏休み木工チャレンジ」。前から味のあるポスターデザインが気になっていた。
 

 上の写真の木工キットを事前に市内の協力店で購入してもらい、子どもたち(小学6年生まで)の自由な発想で工作をしてもらおうというもの。夏休みの自由研究としてもなかなか魅力的に思えた。
 
 本日から始まった展示会では、たくさんの子どもたちの作品の中から好きな作品1点を選んで人気投票もできる。作品はみな創造的な力作ぞろいなので、どれか1点を選ぶとなるとなかなか悩ましい。
 展示会は本日25日から27日(土)まで。28日の13時から表彰式が行われる予定。2年目の今年からは表彰式が行われる28日の10時から当日申し込みOKの体験工房も開催されるとのこと。
 このイベントは市内の様々な業種の協力を募り実行委員会形式で企画・運営され、多くの子ども達に工作の楽しさを体験してもらおうというもの。ポスターデザインから手作りですが、仕事はプロのお仕事。協力業者も商業だけでなく、建設関係などものづくりに関わる市内業者さんも結集して協力していた。
 こういった手作りイベントが少しづつ広がることで、今まではあまり出会う機会のなかった業種や市民との交流が盛んになることを期待したい。
 この展示会で賞をもらった子どもが学校で紹介されたりする例も出てきたそうで、子どもたちの心にも夏休みの想い出としてしっかりと刻まれるのではないだろうか。
 

2016年8月17日水曜日

条例の検証は議会改革を進める原動力(議会運営委員会視察報告)


 議会運営委員会では8月1日に埼玉県所沢市、2日に岩手県久慈市の行政視察を行った。議会基本条例施行後の議会がどのように条例の検証を行っているのかが視察テーマだ。

埼玉県所沢市

議会のマスコットキャラクターは「みみまる」クン

 所沢市議会では、専門的知見を得るための学識経験者等に対する調査委託の活用、すべての議案提出資料の統一フォーマット化、質疑の一問一答(一括質疑と選択可能)採用、議案質疑の質問回数(3回)と質問時間制限(1時間)などの改革に取組み、改革の検証方法として、議会基本条例の条項ごとの実施状況と今後の方向性など、議会自身の検証評価を報告書として市議会HPで公表してきた。

 検証には予算・決算で使用している事業評価シートの考えを取り入れたものとなっている。その他にも閉会中の文書質問(全会一致しないとできない原則)議員間討議、参考人招致、公聴会と意見提案手続き、政策検討会等の付属機関の設置など、議会基本条例施行後もこうした改革を次々行ってきた。改革の歩み全てが冊子として1冊にまとめられ議会事務局改革のバイブルとして日々活用されていた。

改革の検証は事業評価表でチェック

 改革の検証は事業評価表で自己評価し、常に取り組み状況をチェックし「議会評価報告書」で報告している。また議会報告会には参加しない市民意見聴取のためワールドカフェスタイルの市民懇親会を開催し、サイレントマジョリティー市民意見を集約する取組みを行っている。
 議会基本条例を制定後、条例を運用する中で自己評価を行い、議会事務局報告会を重ねる中で課題を共有し問題点の改善を行ってきたことは重要なポイントだ。

市議会が自己評価を行い効率的な議事運営のために本会議での質問時間制限を設けている点など、議会が常に市民を意識して改革を進める手法について、小金井市議会が学ぶべき点が非常に多いと感じた。


岩手県久慈市

埼玉県所沢から東北新幹線八戸駅でJR八戸線のディーゼルカーに乗換えて1時間50分で久慈市へ。風光明媚な三陸海岸は「やませ」の霧に包まれていた。




「あまちゃん」でも使われた駅前風景だが、商店のシャッターが目についてしまう。「あまちゃんフィーバー」後の復興のゆくえが気がかりだ。がんばれ三陸。


「北限の海女」で知られるように水産業の街でもある久慈港。東日本大震災後に防潮堤のかさ上げ工事が行われていた。


条例前文が方言の「じぇじぇじぇ基本条例」

 平成23年8月の市議会改選後の議長選挙で所信表明を行い当選した議長の諮問による議会改革検討委員会(各会派代表者で組織)で検討し、同24年12月に議会基本条例の必要性を答申した。その後議長を除く全議員による議会改革推進特別委員会を組織し、答申内容に沿い分科会形式で議論。方言による前文で構成された「じぇじぇじぇ基本条例」素案をまとめ、全体議論とパブリックコメントと経て平成26年3月に条例を制定した。条例制定後に発足した議会改革推進会議のもとで議会改革と検証が行われている。

議長・委員長志願者による所信表明を規定している

 議長や委員長の選出過程を明らかにするため本会議で志願者による所信表明を行う事を規定していることが驚きと、久慈市議会の大きな特徴と感じる。
 議会改革取組みの議長諮問に「議会改革に継続的に取組む議会」との項目があり、改革のための改革に陥ることがないよう、議会の取組みの先には市民福祉の向上という目的があることを議会改革のスタートとしている。
 議会活動の検証のためにPDCAサイクルを回し、議会基本条例運用基準に「議会活動チェックシート様式」を定め、専門的知見を得るためにPDCAシート監修元の早稲田大学マニュフェスト研究所から検証の助言を得ている点は重要だ。PDCAサイクルは単年度で、長期的・短期的課題にかかわらず毎年シートへの落とし込みを行い、シートの所管は議会運営委員会内の改革検証委員会で行っている。


議会報告会の限界は「かだって会議」で乗り越える

 市民のための改革という点では、「久慈市に生まれた子どもたちが、久慈市の良さを知らないまま大人になり、進学や就職で外へ出て帰ってこない」とのお話に、地方特有の若年層の流出への危機感が背景にあると感じた。
 そして岐阜県可児市をならった所沢市議会同様に、議会報告会以外の市民意見の反映の場として「かだって会議」(方言の『語って』からきている)開催を準備していた。議会報告会には毎回決まった人しか来ず、大多数の市民意見の反映ができていないという反省にたって企画されていることは、これから議会報告会を開催する小金井市議会でも参考にすべき取組みではないだろうか。







2016年8月10日水曜日

総務企画委員会行政視察報告


東京〜盛岡間をわずか2時間20分で結ぶ国内最速の時速320キロを誇る「はやぶさ」の登場が今後地方に与える影響が注目される。

  所属する総務企画委員会では7月26日に盛岡市、27日に喜多方市の行政視察を実施した。

岩手県盛岡市「ほほえみと太陽のプロジェクト」

消費者トラブルと多重債務の救済が目的

 市民の多重債務、消費者トラブルの救済を「ほほえみと太陽のプロジェクト」として「多重債務に強いまち盛岡」を目指した取り組みについて視察した。
 人口296,500人の盛岡市では消費者行政の一環として「消費生活センター」を設置し、消費生活相談、法律相談、多重債務問題に取組み、平成元年からは消費者救済資金貸付事業、平成24年からは福島第一原発事故を受け、食品放射能物質検査を始めている。人員体制は十四人で、副主幹1人、主査2人以外、所長を含めた全員が非常勤嘱託職員で、他に計量行政活性化事業を行っている。

税の徴収率向上は部・課の連携と包括的支援で


 税の滞納を減らすため、徴税部門の強化だけでなく、 消費生活相談事業を拡大し、市民を多重債務から救済するため「消費者救済資金貸付制度」を運用していることが大きな特徴だが、多重債務の発生予防のための啓発を小学生から大学を含めた市民に出前講座の形で行い、実際の救済にあたっては弁護士会や警察だけでなく税の滞納の背景にある生活困窮からの救済のため、地域福祉、障害福祉、児童福祉や保健、精神保健福祉、職業安定所、社会福祉協議会など様々な部・課との包括的連携で支援を実現していた。


目的は多重債務者の生活再建

 超税率向上というと通常は直接的に市民部だけが滞納者対応を行うことになるが、盛岡市の場合は市民の生活全般に目を向けて多重債務の背景に迫り、多重債務者の生活再建を目的に行政の連携で包括的に支援し、生活困窮から救済する目的が明確にされた取組みと感じた。


福島県喜多方市 市役所新庁舎建設

庁舎は市民懇話会設置から5年で完成

会津地方のシンボル磐梯山と水田。
 人口は48,800人で平成18年に熱塩加納村、塩川町、山都町、高郷村と合併し新喜多方市となっている。
 昭和33年建設の旧庁舎は、その後の合併による執務スペース不足により、それまでの車庫を執務スペースに転用しき教育委員会を外部に設置するなど市民にとって利用しにくい状況から、平成22年に「新庁舎建設市民懇話会」を設置し建設計画の提言を受けた後、市長を本部長とする「新庁舎建設推進本部」を設置し基本構想、基本計画案を策定し、パブリクコメント、市民説明会を実施し、これらの市民意見を踏まえて平成23年4月に新本庁舎基本構想及び基本計画を策定、その後市民説明会を6会場で実施、同年5月〜11月にプロポーザルにより設計事業者を選定。12月〜3月にプロポーザル案をもとにして市民参加のワークショップ6回開催し、平成24年4月に基本設計終了、5月から翌年3月で実施設計を終え、平成25年7月工事に着工、平成27年8月にすべての工事を完了した。
 議会での議論は平成24年1月〜9月に「市役所庁舎建設特別委員会」を15回開催した。


敷地を最大限有効活用し庁舎移転の負担も軽減した

 建設手法として特徴的なのは 、敷地内の駐車場に新庁舎を建設し、期間中は旧庁舎で業務を継続し新庁舎完成後に移転。旧庁舎を解体後に市民ホール棟を建設したことだろう。
 
左手前が新庁舎で奥が市民ホール。その右に見えるのが既存の保健センター。それぞれは廊下で結ばれている。
庁舎北側に状況。喜多方市の象徴の蔵を残し、敷地形状に合わせた配置にしている。


新庁舎の立面はこのような形になっている。これは4階議会フロアの案内図だが、委員会が同時開催できる構造。

市民参加はワークショップ形式で

 中心市街地にある市役所としては、蔵とラーメンで有名な 観光地として来外者の駐車スペースもある程度確保しておきたいとの思いもあったそうで、こうした事情も勘案しながら喜多方市の人口規模に相応の執務スペースを算出し、市民ホールの会議室も庁舎の会議室として活用することで新庁舎の床面積を削減して敷地の有効利用を図っている。 
 市民参加はワークショップ形式をとり基本構想、基本設計、実施設計と進むプロセスごとに市民参加を募って行ってきた経緯は小金井市でも参考になる点が多い。
 
外光の取り入れ方が秀逸で、美術館の廊下を思わせる雰囲気。


天井はプレキャストコンクリートパネルそのもの。パネルのつなぎ目のスリットに照明を配置、空調や電機などの配線の大部分は床下に。そのため空調吹出し口は床にある。

 設計についても工事期間短縮のために、現場でのコンクリートの打設を減らすためプレキャストコンクリートパネルを採用し、室内も釣り天井ではなくコンクリートパネルや天井配管をむき出しにするなど、過度な装飾的要素を排したデザインにしている。しかし、東北の寒冷な気候に対応するための複層ガラスや、豊富な地下水を利用した冷房や屋上の太陽光パネルで環境負荷を低減し、エネルギー効率を高めている点も見逃せないポイントとして特に記しておきたい。

市民要望を受け止めた市議会


 庁舎建設について市議会は特別委員会を設置して9ヶ月間で15回開催した経過を参考にすべきではないだろうか。町村合併を経て、市役所機能の効率化と庁舎のバリアフリー化に対する市民要望の高まりと、東日本大震災以来防災拠点として、震災の復興拠点としての庁舎の重要性を市民の視点で勘案すれば、小金井市でも一刻も早く新庁舎の建設が望まれるように思えた。
地下の様子。庁舎は免震構造で、ここに組み上げた地下水を循環させ冷房に使用する使用後の地下水は庁舎内のトイレ用に再使用している。







生きづらさを救う居場所とは (発達障がい者当事者青年Rさんのお話を聴いて)

昨日の午前中は、公民館貫井北町分館で「コロナ禍を経験して考える 人と地域がつながる共生社会」講座でした。 7 月 23 日まで 6 回連続で様々な生きづらさを抱える当事者のお話しを聞く男女共同参画講座 の第 1 回目で、講師はこれまで 3 期にわたり小金井市地域自立支援協議会...